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コーポレート・ガバナンス白書2023

コーポレート・ガバナンス白書とは

2年に一度、上場企業から提出される「コーポレート・ガバナンス報告書」を東証が分析し発表するもので2007年から公表されています。

 

 

2023年版で注目されている項目

「資本コスト意識の経営」と「サステナビリティ課題への取り組み」が特に前回に比べて大きく取り上げられています。

資本コスト経営の強調

資本コスト経営については、前回の2021年版では「株主との対話」に絡めて触れられていましたが、今回は事業ポートフォリオの再編戦略や政策保有株式と共に、より強調されています。

以前から、企業が資本コストを上回る利益を出せているかどうかについて、投資家と企業間で認識ギャップがあると指摘されていました。この認識ギャップを埋めるべく、コーポレート・ガバナンスコードは2018年の改訂以来、企業に対し、自社の資本コストの把握や収益計画、資本政策方針の提示、収益力や資本効率などに関する目標設定、そしてそれを達成するための経営資源の配分(設備投資、研究開発、人的資本投資など)について株主に説明することを求めています。

生命保険協会の調査によると、日本企業の約70%が自社の資本コストを把握していますが、30%は具体的な数値を把握できていません。また、資本コストを把握している企業の中でも、多くが自社の資本コストを5%~7%台と認識しています。
これは、ROE8%以上が最低ラインとされた伊藤レポート初版(2014年)の数値を下回っています。

重要な経営指標としてROE(株主資本利益率)を掲げる企業が半数以上あるのに対し、投資家が重視する資本コストやROIC(投下資本利益率)を重要指標とする企業は少ないのが現状です。

企業の認識では、ROE>資本コストという声が多い一方で、投資家サイドの認識としてはROE<資本コストないしはROE≒資本コストと見る声が多くなっており、この点において企業と投資家の認識ギャップがあることがわかります。

サステナビリティへの取り組み

コーポレート・ガバナンス改革を通じて収益性への注目が増える一方で短期的な収益追求に陥る危険性もあることから非財務情報を重視して中長期的な企業価値向上の観点から企業を評価することの重要性も浸透しつつあると記述されています。

白書では、「ダイバーシティ・多様性」「女性」「従業員」「取引先」「人的資本」など、サステナビリティ要素と関連するキーワードが頻繁に用いられていると指摘しています。

サステナビリティ投資は、中長期的な効果が期待されるものの、短期的にはむしろコストとして認識されるものも少なくなく、株主だけでなく全てのステークホルダーからの理解が重要になってきています。

 

まとめ

「コーポレート・ガバナンス白書2023」で示されているように、経営者には、資本コスト、収益性、そしてサステナビリティの観点を総合的に考慮し、ステークホルダーとの対話を通じて高度な経営判断を行うことが求められていることが、よく理解できます。