ご覧いただき、ありがとうございます。
今回は、演習・クイズ形式で、実際にあった不正事例からの教訓をお伝えできれば、と思います。少しだけお付き合いください。
取引事例の概要
■ A社では、ある新規事業の作業の大半を外注しており、外注費の支払は「外注費支払明細表」により月次で管理を行っていた。
■ 新規事業における社内のチェック体制は比較的甘いものだった。
■ 「外注費支払明細表」(年間金額)は、次のとおりであった。<数字はフィクション>
(諸口:小規模な複数の外注先をまとめたもの)
■ 経理担当者が不正実行犯で、特定の外注先に対する支払を自分自身の口座に振込む手口であった。
■ 監査の対象になっていたが、残念ながら監査で不正は発見されなかった。
どこに目をつけて監査を行うべきだったでしょうか?
教科書的には、、、
「ラウンド数字には要注意!」ということで、C社の5,000,000円に違和感を覚える方が多いと思います。
これはこれで正解です。
しかし、もう1点。
ここで紹介したいのは、「諸口」を使った不正隠ぺい工作です。
この会社の「諸口」、小規模な取引をまとめたものにしては、金額が大きいですよね。
オモテに出したくない相手先を「諸口」などに潜ませている不正事案は少なくありません。
また、金額順に表示されているようで、実はオモテにでている取引先よりも大きな取引金額の
相手先が存在した、なんてこともあるんです。。。
(全てが不正隠しとは言いきれませんが、何らかの問題含みであることが結構あります!)
監査人が行っていた監査手続
- 各月の外注費について、月別・相手先別に増減・比較分析を行い、サンプリングにより
抽出した月の外注費支払金額合計と「外注費支払明細書」の合計額を突合していた。 - 「諸口」は“小規模な複数の外注先をまとめたもの”との経理担当者の説明を鵜呑みにして、
中身まで確認しなかった。
反省コメント
- 「諸口」について、具体的な取引先・支払先名、取引内容、契約内容などを調査しておけばよかった・・・。
- 経理担当者からの回答を鵜呑みにせず、証憑書類まできちんと確認しておけばよかった・・・。
まとめ
具体的な取引先名が明示されていない、勘定科目・明細表には監査上、注意が必要です。
「仮払金」「仮受金」「雑損失」「雑収入」「諸口」「その他」
これらの金額・残高が「大きいかな?」と感じたら、中身を確かめておくことが大切なんですね。
公認内部監査人・公認不正検査士・公認会計士
榎 本 成 一